院内の備品装具の活用も忘れないで―装具チームの取り組みから考える備品装具の管理と運用ポイント―
キーワード:備品装具管理、装具療法、院内教育
脳卒中のリハビリテーションにおいて、回復期では歩行再建に下肢装具が重要な役割を担います。近年では作製した装具を生活期でも適切に活用し続けられるように、装具ノートなどを活用して、装具使用者や支援者に装具のトラブル事例や対処方法、相談先を共有するなど、装具に関連する情報を施設間で連携していく重要性が高まっています。装具を適切に使用できるように工夫することは、院内で備品として管理されている装具(以下、備品装具)にも当てはまります。
特に備品装具が充実している施設ほど、管理や臨床現場に活かす方法について悩むことがあると思われます。本稿では当院の装具チームの取り組みを通して、備品の下肢装具を安全かつ有効に活用するためのポイントを紹介します。
※本記事は、理学療法士を対象に記載したものです。全ての方に当てはまる内容ではありませんので参考程度にお読みください。
備品装具が充実していると臨床はどう変わるのか?
※当院での装具棚
複数の装具を比較できる環境が装具療法の選択肢を増やす
当院では13種類、約180本の備品装具を常備しています。脳卒中後の歩行障害は一様ではなく、下肢装具の使用目的は多岐に渡ります。支える機能を重視して装具の継手で関節角度を制限(止める)する装具や、回復を想定して継手で関節の動きを制動(抵抗を加えながら動かす)する装具など、複数の装具を実際に試しながら評価できることで、歩行の安定性や歩容の違いを比較でき、適切な装具選択につながります。また、実物を見て、実際に試用することで患者自身が装具使用のイメージを持ちやすくなります。処方を最終決定する医師も装具検討会にて、立位歩行場面を確認し比較検討できるため、判断材料とすることができます。
患者自身の装具が完成するまでの空白期間を埋める
装具の採型、採寸から納品には一定期間を要します。当院ではオーダーメイドの長下肢装具でも1週間での納品を実現していますが、その間に院内備品装具を活用することで、装具療法を止めずに提供することが可能です。義肢装具士は2社の協力のもと曜日別に週6日、リハビリテーション室内に設置している義肢装具室にて対応をしていただいています。
備品装具を安全に運用し管理するポイント
ナンバリングと台帳管理
装具ごとに番号を付け台帳で管理することで、使用状況を可視化しています。これにより、紛失を防止することができます。また、病棟生活内での長期間の使用は避け、主に理学療法室内での評価、練習用の装具と病棟生活場面での使用を許可している装具など用途を分けて管理しています。
使用ルールの明確化
備品のプラスチック装具は皮膚トラブルリスクを考慮し、病棟生活内への長期間の貸し出しは避けるようにし、理学療法室内での評価場面で使用することとしています。ベルトの締め具合にて、ある程度の調整が可能な足部覆い型の靴型短下肢装具は貸し出しを可能としており、皮膚トラブルのリスクを最小限にしています。
重量、プラスチック装具の厚さを明確化
当院では栄養状態の評価として、定期的に体重と体組成計での計測を行っています。装具を装着したまま体重を測ることがあるため、各装具に重量を明記しています。また、プラスチック装具は厚さにより制動力や矯正力が変わるため、厚さの数値を明記しています。これにより病棟業務の負担軽減と適切な装具選定に活用しています。
定期的なメンテナンス、修理の依頼
ベルトなどの劣化、ひび割れ、支柱の歪み、ロッドの摩耗などを2ヶ月ごとに全て点検しています。発見した場合、まとめて修理の依頼をしています。これにより、備品装具も長く安全に使い続けることができます。
院内の装具療法の教育
専門職評価表(※)にて年次ごとに装具療法の提供能力を可視化したうえで、装具チームが主催する勉強会を理学療法部門スタッフ対象に実施しています。装具の継手などの適応検討や設定調整に必要な臨床知識の向上を目的に定期的に勉強会を企画し、経験の浅いスタッフでも適切な備品装具の評価の方法や処方した装具の活用方法などを学んでいきます。
(※)専門職評価表とは、理学療法士として組織内で求められるキャリア発達を目的にした一覧表。①患者理解、②評価、③目標計画の立案・見直し、④直接的な支援(知識・治療技術・マネジメント)、⑤ADL(他職種と協働するADLへの直接的援助)、⑥生活再構築への支援の6項目について、Stage1〜4として到達目標を明記したキャリアラダー用紙。
備品装具の充実化
年間で備品装具のメンテナンス費に加えて、新規の備品装具購入のための予算を確保しています。近年ではカーボン製の既製品を購入し、装具外来の対応も含めて幅広いニーズに向けた整備を継続しています。
装具チームの取り組みが臨床にもたらす効果
スタッフが備品装具にも目を向けることができ、円滑に装具療法を提供できる環境が整えられています。
装具チームとして教える側を担当することで、受け身の学習ではない教育的価値につながっています。
まとめ
装具の効果を最大限に発揮するためには、適切な管理体制が不可欠です。備品装具の充実や装具チームの取り組みは臨床の質を支える基盤となります。
文責:初台リハビリテーション病院 理学療法士 久保拓夢


