装具診の開始により装具作製数は3倍に、so good! 実際の装具診を全ておみせします!

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装具診、義肢装具専任療法士、多職種視点
このコラムは理学療法士向けとなります。多職種での装具作製の流れについて当院の取り組みについてご紹介しますので、参考程度にご覧ください。
本記事の内容
当院では「装具診」と称し多職種の視点で患者さんに適した装具を検討し、作製や調整を行っております。他の施設では「装具カンファレンス」「装具検討会」といった名称で取り組まれているかと思います。内容としては理学療法士とともに医師や作業療法士、義肢装具士がチームとして連携して、患者さんの身体状況や機能、日常生活のニーズに基づいて最適な装具を提供することを目的としています。
当院でも「装具診」を実施する前は、医師の処方のもとで“担当”理学療法士が中心となって検討を行っていました。その際には担当理学療法士の装具に関する知識や経験に大きく左右されていました。
現在では装具診を導入したことで多職種の視点から患者さんに必要な装具を検討していくことができるようになりました。
今回は当院の実施例をお伝えさせて頂きます。参考程度にご覧ください
当院装具診の実施例
【実施日】
毎週金曜日10時〜17時
【実施場所】
戸田中央リハビリテーション病院 1階リハビリセンター
【参加者】
患者さん、リハビリテーション専門医2名、義肢装具士2名、義肢装具専任理学療法士・作業療法士:各1名、担当理学療法士・作業療法士
【対象】
前週の火曜日からその週の月曜日までに入院した中枢疾患の患者さんで下記に該当する方
【対象となる身体所見】
<上肢>重度麻痺 Brunnstrom StageⅠ・Ⅱ、肩関節亜脱臼(0.5横指以上)
<下肢>重度麻痺 Brunnstrom StageⅡ〜Ⅳ、運動失調陽性
【事前準備】
装具診前にスタッフがゲイトジャッジシステム®での歩行・起立動作などの筋電図評価を行う
【装具診当日の共有事項】
新規評価:事前の筋電図評価と脳画像から予測される問題点と照らしあわせて多職種に情報を共有。その後実際に患者さんを交えて多職種で動作を確認していく。
仮合わせ:多職種で静的場面・動的場面でのフィッティングを確認していく
【最短装具作製日数】
最短で入院から8日間、採型から1週間後の仮合わせで問題なければ受け取りが可能
【その他】
当院は複数のリハビリ室があるが、装具診実施日には装具診対象者だけでなく、すでに装具を作製した患者さんも装具診と同じリハビリ室で介入してもらい装具の有効活用について適時アドバイスできるようにしている
当院の装具診は上記の通りになります。
当院では義肢装具士は週に1回の来院になるので、事前の筋電図評価など情報収集をしっかり行い、当日の円滑な評価に繋げています。
当院の装具診体制の特徴
1番の特徴としましては義肢装具専任理学療法士と作業療法士が1名ずつ在籍していることになります。専任スタッフは、単位に縛られず、装具作製のための情報収集や共同介入、アフターフォローを行い、すべての患者さんに有効な装具が提供できるように動いています。また事前評価として筋電図での動作評価を行い、装具の使用により筋活動の発揮が見られれば装具の作製または使用を進めていくなど筋電図を有効活用しております。
また専任の作業療法士は上肢装具・スプリントの適応、使用時の歩行への影響なども理学療法士分野とリンクして検討を行っております。
装具診は新規患者さんへの評価・作製ということだけではなく、装具診という場で装具作製後の患者さんも集まりアフターフォローもできることで装具の有効活用に非常に役立っております。
当院の装具診を始めてからの臨床・教育的な効果
装具診開始前は若手のスタッフが担当の場合に装具作製に迷い積極的な作製に繋がらないこともありました。2021年の装具診開始からは作製本数は3倍程度に増えております。本数は1つの視点でしかなく増えたことが正しいと言い切れないのですが、装具に苦手意識があったスタッフでも装具診でのフィルターを通ることで必要性に応じて積極的に装具を作製し利用できるようになっています。今後は本数という量の視点だけでなく、処方の増加が治療成績に反映されたかという質についても客観的なデータを用いて検証していく予定です。また質の向上とともに若手への教育へも継続して取り組んでいきたいと思います。
装具診に限らずですが多職種での多面的な視点を持って装具作製を検討することは非常に重要だと考えます。多くの患者さんに装具を有効に作製し活用していければと思います。
まとめ
「目的」
装具診により多職種の視点で装具の有効性を検討している
「当院装具診の実施例」
週に一回、リハ専門医、義肢装具士、義肢装具専任理学療法士・作業療法士、担当理学療法士・作業療法士で事前情報と当日の患者さんの動作を見ながらチームとして装具について検討
「当院の装具診体制の特徴」
義肢装具専任理学療法士・作業療法士が在籍しており、装具作製・活用に向けた情報収集、治療介入のサポートを実施している。筋電図を使用し装具作製についての情報収集を行っている
「装具診によって得られる臨床・教育的効果」
装具診のフィルターにより、スタッフの経験値に左右されずに適切な装具作製・活用に繋がっている。今後は装具活用の質的な部分や若手への教育的な面を継続して取り組んでいきたい。
もしご興味ありましたら当院HPにて装具診を紹介しております。こちらもご参照ください。
https://www.toda-reha.jp/rehabilitation/
文責:戸田中央リハビリテーション病院 高儀隼