装具を使い続けるための自己装着支援 ―理学療法士ができる工夫―
Key word:下肢装具、装着動作、自立支援
※本記事は、理学療法士の方向けに、下肢装具の自己装着支援について紹介するものです。実際の対応は、対象者の状態や装具の構造に応じて個別にご検討ください。
本記事では、以下の3つの視点から、下肢装具の自己装着支援について紹介します。
みなさんは「装具の自己装着」について、どのような視点で関わっているでしょうか。
臨床場面では次のような状況を経験することがあります。
- 装具があれば歩けるが、自分では装着できない
- 装着に時間がかかり、トイレに間に合わない
- 装着に毎回介助が必要であり、結局使われなくなってしまう
本記事では、装具を生活の中で使い続けるための第一歩として「装具の自己装着」に着目し、自己装着を支援するための考え方や具体的な工夫について紹介します。
装具を継続して使用するためには、機能面だけでなく、ユーザーにとっての使いやすさも重要です。才藤1)は、義肢装具などの支援機器が「役立つ」ためには、機能性だけでなく、装着のしやすさなど、生活場面で十分に活用できる状態であるかどうかにも配慮する必要があると述べています。
これまでの報告では、装具の使用継続に関して、以下のような課題が示されています。
- Swinnenら2)は、装着・脱着の困難さが、装具の使用継続を妨げる要因の一つになり得ることを報告しています。
- 高岡3)は、退院後に自己判断で装具使用を中止している例があり、その理由の一つに「装着が面倒」といった意見があることを報告しています。
- 原4)は、在宅で装具を使用しない群では、「履く必要性を感じない」「装着が手間」といった否定的意見が多かったことを報告しています。
これらの報告から、装具の継続使用を支えるためには、歩きやすさだけでなく、装着しやすさにも目を向ける必要があります。理学療法士にとって、装着動作の評価や支援は、装具を生活につなげる重要な関わりの一つといえます。
装着方法のバリエーション
それでは、装具の基本的な装着方法について確認していきましょう。
脳卒中片麻痺者の短下肢装具の装着方法を調査した佐々木ら5)は、装着方法を、主に立型と組型に分類しています。
- 立型:装具を床に立てて足を入れる方法
- 組型:麻痺側下肢を組んで装着する方法
先行研究5)では、装具の装着方法には、体幹機能や座位バランス能力が関係することを報告しています。また、体幹機能と装着にかかる時間との関連も報告6)されています。実際の生活場面では、座面の高さや柔らかさ、裸足・靴下着用などによっても、装着のしやすさは変わります。
そのため、ユーザーの身体機能や生活環境に応じて、自己装着しやすい方法を選択することが重要です。
自己装着を支援する工夫
自己装着が難しい原因は一つではありません。ここでは、自己装着を支援する工夫の例を示します。
装着手順を間違えやすい場合
ベルトに番号を付ける、色分けをする、装着手順書を作成するなどの工夫があります。吉川ら7)は、装着番号シールや装着手順書を用いることで、装具の自己装着動作が改善した症例を報告しています。
装着中にベルトやベロを踏んでしまう場合
面ファスナーシールなどを用いてベルトを一時的に仮止めし、開いた状態を保つ方法があります。古西8)は、金属支柱付きAFOを中心に、仮止めテープ加工によってベルトを開いた状態で保持する工夫を紹介しています。
ベルト操作に時間を要する場合
ベルト操作にかかる時間を短縮する工夫として、装具のベルトやバックルを工夫する方法があります。クイックリング(イージーリング)7,9)やマグネットロック式スライドバックル(FIDLOCK社製)、片手操作バックル(YKK社製)10)なども選択肢となります。
※それぞれ、ベルトが引っかかりほつれる恐れがある、下腿周径が変わった場合には調整が必要になるなどの注意も必要です。
これらの工夫が実際に対応できるかどうかは、装具の構造やユーザーの状態によって異なります。必要に応じて、義肢装具士と相談しながら検討しましょう。
おわりに
本記事では、装具の継続使用を支える視点として、自己装着に着目する理由、装着方法のバリエーション、自己装着を支援する具体的な工夫について紹介しました。
装具は歩行を支援する道具ですが、実際の生活場面で使い続けてもらうためには、「歩きやすさ」だけでなく、「装着しやすさ」にも目を向ける必要があります。
また、装具の装着方法や支援の工夫は一つではなく、ユーザーの身体機能や生活環境、装具の構造に応じて検討することが重要です。
理学療法士は、歩行能力だけでなく、自己装着にも目を向けることで、ユーザーが装具を生活の中でより活用できるよう支援することができます。
本記事が、装具の自己装着について考えるきっかけとなり、日々の臨床に役立てていただければ幸いです。
【引用文献】
- 才藤栄一:「役立つ」とはなにか?義肢装具の性能や使用法は合理的か?日本義肢装具学会誌.2009;25(2):82-85.
- Swinnen E, et al. Neurological patients and their lower limb orthotics: An observational pilot study about acceptance and satisfaction. Prosthetics and Orthotics International. 2017;41(1):41-50.
- 高岡徹:脳卒中片麻痺に対する短下肢装具処方の実際.日本義肢装具学会誌.2001;17(1):6-10.
- 原洋史:自宅内歩行における下肢装具使用状況の影響要因―慢性期脳卒中患者を対象とした検討―.理学療法研究・長野.2007;35:24-26.
- 佐々木紀葉ほか:脳卒中片麻痺者の短下肢装具の装着方法について―装具の種類および身体機能・バランス能力との関係―.日本義肢装具学会誌.2019;35(3):219-224.
- 右田正澄,山本澄子:脳卒中患者の座位バランス能力が短下肢装具の装着に要する時間に与える影響.理学療法科学.2021;36(6):845-849.
- 吉川大志,金子里可:脳卒中片麻痺者2例に対する短下肢装具の装着改善に向けた工夫と実践.支援工学理学療法学会誌.2022;3(1):55-61.
- 古西幸夫:短下肢装具の自己装着支援に役立つベルトの仮止めテープ加工の工夫.理学療法ジャーナル.2025;59(12):1505-1507.
- 株式会社ホワシ:クイックリング.URL:http://howashi.jp/CCP025.html 閲覧日:2026年7月6日.
- YKK株式会社ジャパンカンパニー:片手操作バックル[Item code: IB-KT].YKK株式会社ジャパンカンパニー製品情報(Powered by イプロスものづくり).URL:https://pr.mono.ipros.com/ykkfastening/product/detail/2000739202/ 閲覧日:2026年7月4日
文責:初台リハビリテーション病院 理学療法士 古西幸夫


