短下肢装具(AFO)は「制動力」で選ぶ ~効きの強弱から整理するAFO選定の基本~
キーワード:足関節底屈制動、短下肢装具選定、歩行安定性
※本記事は、理学療法士の方を対象にしたものです。
すべての方に当てはまるわけではないので、参考程度にご使用ください。
はじめに
短下肢装具(AFO)は同じように見えて、実は「制動力(装具の硬さ)」が大きく異なります。初期接地から荷重応答期にかけて、どれだけ底屈を制動できるかが脳卒中片麻痺者の歩行再建に重要です。また、装具の制動力の違いは、歩行の安定性や膝関節の安定性に関連するため理解することは非常に重要です。
底屈制動力が強い装具では初期接地の足関節のアライメントを修正することで、麻痺側立脚期に麻痺側の膝関節が急激に伸展してしまうextension thrust patternなどの歩容異常への改善が期待できます。
本コラムでは、プラスチックAFO(継ぎ手なしAFO、継ぎ手ありAFO)やゲイトソリューションの制動特性(Nm/deg)を比較し、「制動力に基づいたAFOの選び方」を整理していきます。今回は、比較対象の中でも制動力が最も低いオルトップAFOを基準に比較していきます。
※対象者の歩行速度や体格などによって制動力は異なる可能性があるため、解釈には注意が必要です。
装具別での制動力の違いについて(単位:Nm/deg)
プラスチックAFO(継ぎ手なし)の比較(表1)(図1):
かかとくり抜き有りの比較:
・オルトップAFO:0.2
・オルトップAFO LH:0.4
・オルトップAFO LHプラス:0.5
オルトップAFOは全般的に制動力が控えめで、軽度の底屈制動を加えたい場合や、歩行の自然さを残したいケースに適しています。
かかとくり抜き無しの比較:
4㎜厚のプラスチックAFO(内外果を覆うトリミング):2.4
4㎜厚のプラスチックAFO(内外果を覆わないトリミング):1.6
4㎜厚のプラスチックAFO(内外果を覆うトリミング)はオルトップAFOと比較し約5〜10倍高い制動力を示します。継ぎ手がない場合は、強力な制動力がある一方で、足関節背屈方向への遊動機能が欠如しているため、前型での歩行練習を積極的に行う際には使用に注意が必要です。
プラスチックAFO(継手あり)の比較(図2) :
装具によって制動特性が大きく異なります
・Wクレンザック(ロッド):3.3
・Wクレンザック(バネ):0.06
・オクラホマ継手+モーションコントロールリミッター:2.9
・タマラック:0.2
・ジレット:0.08
Wクレンザック(ロッド)は今回比較した装具の中で最も強い制動力を持ちます。一方でタマラックやジレットは非常に柔らかく、足部の自由度を優先した設計になっています。特に、タマラックAFOは継ぎ手がシリコンであり、足関節の内反が強い症例に対しては使用に注意が必要です。
ゲイトソリューション制動力の比較(表2)(図2):
ゲイトソリューションデザイン(単位:Nm/deg):
- 角速度:20deg/s:油圧1→4、油圧2→0.5、油圧3→0.5、油圧4→0.7
- 角速度:230deg/s:油圧1→5、油圧2→0.5、油圧3→0.7、油圧4→0.9
ゲイトソリューション(単位:Nm/deg):
- 角速度:20deg/s:油圧1→4、油圧2→0.6、油圧3→1.1、油圧4→2.0
- 角速度:230deg/s:油圧1→7、油圧2→0.9、油圧3→1.8、油圧4→2.4
正常な歩行時のロッカー機能の担保に有用な装具です2)。
ゲイトソリューションデザインとゲイトソリューションでは、制動力の違いが生じます。他の装具と比較して、制動力を調整できるため対象者の身体機能や、歩行状態に応じて細かく制動力を調整できる点に優れております。制動力はオルトップAFOと比較し、強い制動力を示します。しかし、タマラックAFOと同様に足関節内反が強く生じてしまう症例や下腿三頭筋の筋緊張が高い症例の使用し対しては使用に注意が必要です。
まとめ
足関節の底屈制動力を理解することは、どのようなAFOを選ぶべきか、制動力の調整をどう判断するかを明確にするための一つのツールとなります。装具設定・調整の根拠づけ、トリミングや継手の選定など選んだ装具をどう最適化するかの判断を支えます。また、歩容変化の説明(歩行がなぜ改善、悪化するのか)を、患者・家族・多職種にわかりやすく伝えられるなどといった、臨床での装具選定の質を高めると考えます。
参考文献
- 昆 恵介. 短下肢装具の歩行への影響. PTジャーナル 51, 301–308 (2017).
- 山本澄子. 動作分析にもとづく片麻痺者用短下肢装具の開発. 理学療法科学 18, 115–121 (2003).
文責:医療法人脳神経研究センター新さっぽろ脳神経外科病院
理学療法士 佐藤佑太郎



