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装具を作り直しても補助がおりる?!装具使用者に欠かせない『装具手帳』とは?

キーワード:フォローアップ 装具手帳 情報共有ツール

※本記事は全員に当てはまるものではありません。参考程度にお読みください。

 

脳卒中者に対する装具は身体機能を補完し、生活における動作の遂行を手助けするツールです。しかし、生活を支えるものであるが故に消耗する道具でもあります(図1)。特にベルトの劣化、継手やプラスチックの破損などが生じやすいため、装具は作製したら終わりではなく、その後のフォローアップが欠かせません。このように装具には定期的なメンテナンスが必要であることを医療従事者のみならず、装具ユーザーの生活を支える支援者、さらに装具ユーザー自身も認識しておくことが重要となります。

 

図1.装具の消耗・破損

 

装具手帳を活用する目的

前述したように装具は消耗品であることから種類によって材質や構造が劣化せず適切に機能する期間である耐用年数が定められており、耐用年数を過ぎていれば装具の再作製において補助を受けられることになっています。しかし、そのことを知らずに使用し続けていることがあります。耐用年数を過ぎて劣化したり、破損したりした装具を履き続けることは、かえって生活動作の遂行を妨げてしまう恐れがあります。そのため、装具の再作製に際して,どの保険が適応になるのかという判断材料にするために「いつ、どの給付制度を利用して装具を作製したのか」という情報が後に必要となります。つまり、装具を作製した時点からの情報管理が重要となります。

そこで、特定の地域で活用されている情報管理ツールには「装具ノート」や「装具手帳」があります。どちらも装具が必要となった疾患名や障害名、作製した装具の種類、装具製作所、作製した医療機関、使用目的などの作製歴、作製後に施された修理、改良などの情報を集約するツールとなっています。このような情報が集約されていると、装具のフォローアップを実施している多施設間において装具ユーザーの支援を円滑に行うことができます。また、手帳の種類にもよりますが、当院で活用している装具手帳には身体機能の詳細な情報も含まれているため、装具の調整や新たな装具の作製に役立ちます。さらに、身体障害者手帳の有無に関する項目も記載されていることが多く,必要な支援やサービスを受ける際に重要な役割を果たします(図2).

 

図2.装具手帳

 

・装具手帳を使用することで装具の情報を一元化し、 誰でもいつでも確認できるようにする

・居住している地域で誰かが装具に生じている問題に気づき、 対応をしやすくする

・装具作製時の制度、 装具作製に必要な情報の記載、 装具作成後の定期的な対応内容など

引用: NPO法人FSA http://npo-fsa.com/activity/detail/masterid/183/

 

このように、装具手帳は装具ユーザーにとって適切なフォローアップを受けるために重要なツールです。最近では、全世帯のスマートフォンの普及に伴い、装具手帳のアプリケーション化がされた「装具手帳アプリ」を開発しました(図3).アプリケーション化に伴い、情報共有の簡便さや紛失リスクの解消などさまざまなメリットがあります。このアプリケーションは、管理者側が契約することでどのような地域でも活用することができます。

 

図3.装具手帳アプリケーション

 

「装具手帳」の利用の促進は、適切な装具の活用や円滑なフォローアップのためにも重要な課題です。しかし、現在のところ、この手帳の存在や利用方法について十分な認識が広まっていないのが現状です。多くの人々がその重要性や有用性を知らないため、「装具手帳」を活用する機会を逃してしまっています。そこで、装具ユーザーならびに装具ユーザーに携わる一人一人が「装具手帳」の認識を高めることが必要です。退院支援や地域のイベントなどを通じて情報を広め、「装具手帳」の利点や取得方法をわかりやすく伝えることで、より多くの人がこの制度を理解し、活用できるようにしましょう。

 

まとめ

本記事では以下のことを紹介しました.

1.装具管理の重要性
装具の管理には使用者本人だけでなく、家族や支援者、地域住民の協力が必要である。

2.情報共有ツールの必要性
装具の適切なフォローアップには、情報を共有できるツールが不可欠であり、装具手帳がその役割を担う。

3.装具手帳の活用推進
装具手帳の活用を広め、より多くの人に適切な支援を届けることが重要である。

文責 桜十字福岡病院 理学療法士 田代 耕一