装具は「作って終わり」ではありません ―安心して使い続けるために、装具のこと、記録していますか?―
キーワード:装具情報管理、装具手帳、継続的な装具支援
<理学療法士向け>
※本記事は理学療法士の方を対象に執筆したものです。内容は全ての方に当てはまるものではありませんので、参考としてお読みください。
装具は「作ったら終わり」ではありません
装具は長く付き合っていくもの
装具は、治療中だけでなく、退院後の日常生活においても長く使用することがあります。身体機能が改善して装具が必要なくなる場合もありますが、ほとんどの方は装具を長期間使用し続けます。患者さんにとって装具は、単なる道具ではなく、身体の一部のような存在になります。そのため、装具は「作製した時点」がゴールではありません。作製後も、身体機能や生活環境の変化に合わせながら、継続的に評価・管理していくものとして捉えることが大切です。
装具との付き合いの中で起こる問題
装具は大切なものですが、あくまでも「物」です。長く使用していると、装具が壊れたり、部品が劣化したりすることがあります。破損すると本来の役割を果たせなくなり、修理や調整、場合によっては再作製が必要になることもあります。また、問題は装具そのものの故障だけではありません。人の身体も時間とともに変化します。例えば、
* 体重が増えた、減った
* 痙縮が強くなった、弱くなった
* 歩き方や動作が変わった
* 生活環境や活動量が変わった
など、さまざまな変化が起こります。身体の状態が変われば、以前は適合していた装具が、現在の身体には合わなくなることがあります。装具が合わなくなると、歩きにくさや痛み、皮膚トラブル、関節の変形の進行などにつながることがあります。装具が合わない状態が続くと、歩行能力や日常生活に影響を及ぼすこともあります。そのため、身体や装具に変化があった場合には、装具の調整や修理、必要に応じて新しい装具の作製を検討します。
装具の問題を早く見つけるために
装具を安全に長く使用するためには、「問題が起きてから対応する」のではなく、「問題を早く見つける」ことが重要です。そのためには、患者さんやご家族に、
* 「装具が以前と違う感じがする」
* 「痛いところがある」
* 「装具がゆるくなった、きつくなった」
* 「部品が壊れている」
* 「歩き方が変わった」
といった変化に気づいてもらうために、患者さんやご家族に日頃から確認しておくポイントを理解してもらうことが重要です。さらに、医師、理学療法士、義肢装具士などの専門職が定期的に装具と身体の状態を確認することで、自覚しにくい装具の破損や身体との不適合を早期に発見できる場合があります。ただし、装具の確認や修理、再作製について相談できる場所は限られています。そのため、装具を作製した際には、
「装具が壊れたら、どこに相談すればよいのか」
「身体に合わなくなったら、どこで見てもらえるのか」
といった相談先を明確にしておくことも重要です。装具に問題が生じた際に適切な相談先につながることが、継続的な装具使用を支えることにつながります。
装具が壊れたり、合わなくなったりしたときに困ること
「今までと同じ装具を作ればいい」のでしょうか?
装具が壊れたとき、「今まで使っていたものと同じ装具を、もう一度作ればいい」と考えることがあるかもしれません。しかし、必ずしもそうとは限りません。装具を最初に作ったときと現在では、患者さんの身体の状態が変化しています。例えば、
* 筋力
* 痙縮
* 歩行能力
* 体重
* 生活環境
* 活動量
などが変化していることがあります。そのため、以前とまったく同じ装具を作ったとしても、現在の身体や生活に合わない場合があります。装具を再作製するときには、過去の装具をそのまま再現するのではなく、「現在の身体機能や生活に適した装具は何か」を改めて評価し、検討することが重要です。
過去にどのような装具を作ったのかを知ることも重要です
装具は、身体の状態だけでなく、生活環境や本人の希望によっても適切なものが変わります。例えば、同じような身体の状態であっても、
* 屋外をよく歩く人
* 自宅で過ごす時間が長い人
* 仕事をしている人
では、必要とする装具が異なります。また、医療従事者から見ると「良い装具」であっても、実際の使用場面では、
「重い」
「履きにくい」
「靴に入らない」
といった問題が生じることもあります。そのため、重要なのは「過去にどんな装具を作ったのか」だけではありません。「その装具を実際に使用して、どうだったのか」という情報も非常に重要です。
例えば、
「以前このタイプを使ったけれど、ここが合わなかった」
「この装具は使いやすかった」
「この部分が痛くなった」
といった情報を記録しておけば、次の装具作製に生かすことができます。つまり、装具の情報は単なる「過去の記録」ではなく、次の装具を検討するための重要な判断材料になります。
どの給付制度を利用したのかも重要です
装具を作製する際には、さまざまな制度を利用することがあります。例えば、日常生活で使用する装具については、障害者総合支援法による補装具費支給制度を利用する場合があります。この制度には耐用年数が設定されているため、「いつ装具を作製したのか」という情報が重要になります。そのため、
* いつ作製したのか
* どのような装具を作ったのか
* どの給付制度を利用したのか
* いつ、どのような修理や調整をしたのか
といった情報を記録しておくことが大切です。
「いつでも、どこでも」装具を相談できる環境をつくるために
だからこそ、装具の情報管理が重要です
ここまで説明したように、装具は一度作って終わりではありません。適切に対応するためには、これまでの装具に関する情報が残っていることが重要です。例えば、
* いつ、どのような装具を作ったのか
* どのような目的で作ったのか
* どの給付制度を利用したのか
* どこで作製したのか
* その後、修理や調整をしたのか
* 実際に使用してみてどうだったのか
* 使用中にどのような問題があったのか
といった情報を一元的に管理できれば、急な装具の破損や不適合が起きた場合にも、これまでの経過を確認しながら対応することができます。また、転居や入院などによって、これまでとは違う医療機関や専門職に相談することもあります。そのような場合にも装具の情報がきちんと残っていれば、過去の経過を一から確認する負担を減らし、次の支援者へ情報を引き継ぐことができます。装具の情報を「患者さんの大切な医療情報の一つ」として管理することが、継続的な装具支援の基盤になります。
「装具手帳」などの情報共有ツールの普及も重要です
装具に関する情報を管理する方法の一つとして、「装具手帳」の活用が考えられます。お薬手帳のように、装具についても患者さん自身が情報を持っておくことで、必要なときにその情報を確認したり、次の医療機関や専門職へ伝えたりすることができます。例えば、
* 装具を作製した日
* 装具の種類
* 作製した目的
* 作製した義肢装具士・事業者
* 利用した給付制度
* 修理・調整の履歴
* 再作製の履歴
* 身体の変化
* 使用してみて困ったこと
などを記録しておくことが考えられます。すでに紙の装具手帳を活用している地域や施設もあります。また、近年ではスマートフォンなどを利用して、装具の情報を管理できる仕組みも生まれています。紙でもデジタルでも、重要なのは、「必要な情報が一元化され、必要なときに確認できること」です。そして、装具手帳は患者さんが情報を持ち歩くためだけのものではなく、医療・介護・福祉に関わる専門職同士が装具情報を共有し、次の支援につなげるためのツールとしても活用できます。装具を「作って終わり」にするのではなく、作製→使用→確認→修理・調整→再作製という長いサイクル全体を支える仕組みをつくることが、装具を必要とする方への継続的な支援につながります。
まとめ
・装具は「作って終わり」ではなく、身体や生活の変化に合わせて継続的に確認・管理することが重要です。
・装具が壊れたり合わなくなったりした際には、過去と同じものを作り直すのではなく、現在の身体機能や生活環境、これまでの使用状況を踏まえて再評価することが大切です。
・作製時期や装具の種類、給付制度、修理・調整の履歴、使用中の問題など、装具に関する情報を記録しておくことで、将来の修理・調整・再作製や、医療機関・専門職間の情報共有に役立ちます。
・「装具手帳」などの情報共有ツールを活用し、装具の作製から使用、確認、修理・調整、再作製までを継続的に支える仕組みを整えることが、安心して装具を使い続けるための基盤になります。
文責:桜十字グループ 理学療法士 遠藤正英


