1. HOME
  2. コラム
  3. 脳卒中の下肢装具は眼鏡や入れ歯と同じ!? ~ずっと歩けるように…下肢装具の継続使用と定期点検の必要性~ 

コラム

Column

脳卒中の下肢装具は眼鏡や入れ歯と同じ!? ~ずっと歩けるように…下肢装具の継続使用と定期点検の必要性~ 

<キーワード>生活用の装具 継続使用 定期点検

脳卒中の下肢装具は、とても大切なパートナーとはわかっていても、「いつかは装具を外して歩きたい」と、誰もが考えていると思います。実際、装具を使い続ける方がいる一方で、自分の判断で装具を外したことで、歩けなくなる方もいます。

今回は、どうして使い続けることが大切か、どうして専門職の定期点検が必要かについてお話しします。

※すべての方に当てはまる内容ではありませんので、参考程度にご覧ください。

病院を退院した後に継続して使用する「生活用の装具」は、使い続けることが大切です。眼鏡や入れ歯を使用している方が、「この眼鏡はいつまで使わないといけないのだろうか?」とか、「この入れ歯はいつまで使わないといけないだろうか?」と考えることがあるでしょうか?

脳卒中の麻痺においては、退院後も緩やかに改善をする方もいますが、回復の度合いには個人差があり、長期的なサポートやリハビリが大切になります。装具は、眼鏡や入れ歯と同じく、生活するうえで大切な「補助具」です。必要に応じて使い続けることで、生活の質を向上させる役割を果たします。

装具は眼鏡や入れ歯と同じ!?

 

歩けるからこそ、装具が必要‼

麻痺がない方でも、偏平足の方は土踏まずを支える中敷きを、O脚の方は足の外側を少し持ち上げるくさび形の中敷きを使用します。このように、土踏まずを支えたり、足のぐらつきを抑えたりすることで、指の変形の防止、膝の負担の軽減や、バランスの向上、踏ん張る力の改善が得られます。

脳卒中で装具を使わず歩くことができる場合でも、足の状態に合わせて、安定性や変形を装具で整えることで、より快適で安定した歩行を保つことができます。装具を使用することで、早く歩けたり、長距離歩けたり、格好よく歩けたり、安心して歩けたりできる可能性があります。足の不安定や変形は、膝の変形や腰痛に、さらには全身に影響を与え、関節の痛みや歩き方の乱れ、生活に必要な歩行の体力やスピードにも影響を与える可能性があります。

サッカーや、マラソンなどのスポーツで、競技に合わせた機能のシューズを選択するのと同様に、生活に必要な機能を装具で補うことは、歩行能力や生活能力を発揮する上でとても大切です。

 

退院した時は、装具を使わなくても歩けていたのに…。

「退院した時は、装具がなくても“つまずかずに”歩けていたのに…。最近足を引きずり易くなったなあ…。」という方も多いかと思います。その場合は、装具をつけて歩くことで、足のトレーニング効果が得られていたことが考えられます。

装具の有無で、働く筋肉が変わります。適切な装具の使用は、足の筋肉や関節を使いやすくし、機能の維持に貢献してくれます。装具を外すことで、得られたトレーニング効果が徐々に低下し、引きずり易い歩行になっていることが考えられます。現在の能力を維持するうえでも、装具の継続的な使用は重要です。

装具の有無で、働く筋肉が変わります

 

まだ、“キレイ”なのに、“壊れていない”のに、装具を作り替えなくてはいけない理由

入れ歯や眼鏡の調整は専門職の方が行います。もちろん装具も同じです。装具の不適合は、あきらかに壊れたり、汚れたり、消耗したりしない限りは、利用者本人では気付きづらい傾向にあります。装具が不適合になる理由は、“足の変形”や“筋肉のやせ”など様々ですが、毎日少しずつ変化していくため、自分では気が付きにくいです。そして、いつのまにか不適合が大きくなり、思わぬケガや転倒を招きます。

見た目がまだキレイであっても、実際は現在の足には合っていないことがよくあります。入れ歯や眼鏡と同様に、装具においても、装具製作所やかかりつけの医師、担当の理学療法士に早めの点検を相談することが重要となります。特に異常を感じなくても、少なくとも1年に1回は点検を行うことをお勧めします。

装具の不適合によるケガや破損

まとめ

利用者本人では気が付きにくい、装具使用の注意点についてお伝えしました。

下肢装具は、入れ歯や眼鏡と同様に必要に応じて活用することで、より自分らしい生活を送る手助けとなります。一見、装具がなくても問題がないように感じても、今まで使ってきた効果であって、使わなくなれば再び歩行能力が低下する場合もあります。お身体の状態を維持するためにも,退院後の生活における装具の継続使用をお勧めします。

義肢装具士、医師、理学療法士などの専門家と一緒に検討し、装具を使用することにより、より快適な生活の継続が期待できるものと考えます。

文責 貞松病院 理学療法士 髙木治雄