急性期脳卒中患者(重度片麻痺)に対する長下肢装具を用いた歩行練習と機能的電気刺激(FES)の併用について
<キーワード>
急性期リハビリテーション、長下肢装具、FES
*本記事は、理学療法士向けに作成された記事です。全ての方に当てはまる訳ではありませんので、参考程度にお読みください。
本記事の内容
長下肢装具を用いた歩行練習とFES併用について
【脳卒中治療ガイドライン2021年より】
・十分なリスク管理のもとに、早期座位・立位・装具を用いた早期歩行訓練、摂食・嚥下訓練、セルフケア訓練などを含んだ積極的なリハビリテーションを、発症後できるだけ早期から行うことが勧められる。(推奨度A)
・下垂足を呈する脳卒中患者に対して、歩行機能を改善させるために機能的電気刺激(FES)を行うことは妥当である。(推奨度B)
【運動麻痺回復における中枢神経再組織化のステージ理論(SwayerOBら2008)】
1st stage recovery
急性期の回復メカニズムは残存している皮質脊髄路を刺激しその興奮性を高めることで、麻痺の回復を促進する時期となる。
2nd stage recovery
皮質脊髄路の興奮性に依拠するのではなく、皮質間の新しいネットワークの興奮性に依拠する時期となり、3カ月をピークにこのメカニズムが再構築される。
3rd stage recovery
6カ月以後も持続して徐々に強化される機能は、リハビリテーションにより惹起されるシナプス伝達の効率化であるとされる。
【Swayne OB,Rothwell JC Ward NS Greenwood RJ:Stages of motor output reorganization strGke suggested physiology after hemispheric by longitudinalstudies of cortical .CerebCoriex18:1909−1922,2008.】
以上の内容から、急性期の重度運動麻痺患者に対して、長下肢装具を用いた歩行練習と FES の併用は、運動麻痺の改善および各種動作能力の向上に寄与する可能性が示唆される。
当院での取り組み
当院では長下肢装具を用いた歩行練習とFES併用を積極的に取り組んでいます。
しかし、急性期の重度片麻痺患者に対する、これらの試み(長下肢装具を用いた歩行練習)は容易ではありません。そのため数日間、長下肢装具を用いた歩行練習を行い、神経症状の改善(特に体幹機能)や介助量が軽減されたタイミングにてFESを併用しています。
◎当院での使用器具
【長下肢装具 モジュラー レッグ ブレース ネオ(株式会社 トクダオルソテック)】
【歩行神経筋電気刺激装置 NM-F1伊藤超短波株式会社)】
長下肢装具と電気刺激療法併用は下記(写真)のように実施していきます。
①NM-N1の粘着パットを麻痺側の足関節背屈・外反が出現するように腓骨神経エリアに装着する。
②麻痺側下肢に長下肢装具を装着する。
③介助量が多い場合には後方介助で対応する。介助量が少ない場合は側方介助でも良い。
④ 麻痺側下肢の振り出しに合わせ、TGスイッチ(電気刺激タイミングを操作する器具)で 電気刺激を入れていく。
*一人での対応が困難の場合、歩行介助と電気刺激の操作に分けて複数名で対応すると 安全に行えます。
長下肢装具と電気刺激療法併用は歩行介助の工夫や長下肢装具の足継手の段階的調整が必要です。
◎歩行介助の工夫について
急性期の重度片麻痺患者は介助量が多く歩行訓練の実施にも大きな労力を要します。そのため、後方介助にて①2動作揃え型歩行から開始し、体幹や麻痺側下肢の支持性が向上して安定性が高まった段階で2動作前型歩行へと移行していきます。
◎足継手の段階的設定について
歩行パターンに合わせて、段階的に①背屈5°固定→②背屈5°~10°制限→③背屈5°~背屈誘導(フリー)へと移行していきます。急性期脳卒中患者は意識障害や体幹機能低下、麻痺側下肢の支持性低下、高次脳機能障害により歩行練習は介助量も多く、異常パターンが出現することが多く経験します。そのような状態で、足継手の背屈遊動を過剰につけてしまうと、かえって歩行練習の介助量が増え、電気刺激の入力操作が困難となります。そのため、足継手の段階的に調整することが必要です。
まとめ
脳卒中治療ガイドラインや運動麻痺回復における中枢神経再組織化のステージ理論からも急性期での「長下肢装具を用いた歩行練習とFES併用」は効果が期待できると考えております。早期に機能回復を促すようなアプローチをすることで急性期後のリハビリテーションを円滑に進められる可能性があるといえます。
今回の記事を参考にして頂き、いろいろと試行錯誤しながら患者と向き合っていただけると幸いです。
文責
社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 埼玉県済生会加須病院
リハビリテーション科 小林宏至



