【第3回】装具で広がる生活と社会参加〜生活を支える装具の価値とは〜
キーワード:義肢装具 地域・在宅 訪問看護ステーション
<理学療法士向け>
※本記事は理学療法士の方を対象に執筆したものです。内容は全ての方に当てはまるものではありませんので、参考としてお読みください。
私たちは無意識に下肢装具は歩くためのものと考えがちですが、在宅脳卒中者の日中活動時間のうち、歩行時間は約2時間であるのに対し、座っている時間は約11時間以上に及ぶと報告されています¹)。重度の運動麻痺や併存疾患により歩行の再獲得が困難な場合であっても、安定した座位保持の獲得や、ベッドから車椅子・ポータブルトイレへの移乗動作における介助量軽減において、義肢装具は極めて高い貢献度を示します。義肢装具は寝たきりを防ぎ、尊厳ある生活を守るための生活の前提条件を整える重要なツールなのです。
「打ち切り」から「つなぐ」理学療法へ:地域の通いの場への参加
これからの理学療法士には、病院や介護保険でのリハを単なる期間満了で打ち切りにするのではなく、利用者が主体的に活動できる次の生活の場へつなぐ意識への転換が求められています。理学療法士が地域の介護予防・日常生活支援総合事業などに積極的に参画し、利用者のしたいこと、行きたい所、会いたい人を引き出し、ICFの概念を踏まえた自発的な活動や社会参加へと導く役割が重要視されています。適切な義肢装具を環境因子として導入し、安全に屋外へ出られるようになることは、義肢装具ユーザー自身が主体となって参加する体操教室などの通いの場や、地域の互助ネットワークに加わるための第一歩となります。利用者を魅力あるコミュニティへとシームレスにつなぎ、仲間づくりを支援していくことは、訪問リハビリテーションの大きな目標でもあります。
退院後の装具トラブル、自己判断で外す前に伝えたい「4つのステップ」
装具利用者が自己判断で装具を外す前に、私は装具利用者に4つのチェックポイントとして以下の内容を伝えています。
皆様が装具利用者に伝える際に、参考にしてみてください。
1.装具を見直すサイン(タイミング)
まずは、ご自身の装具や足の状態をチェックしてみましょう。以下のサインがあれば、見直しのタイミングです。
足の痛みや傷
装具を脱いだ後、足に赤みが残っていたり、擦り傷ができたりしていませんか?
装具の劣化
マジックテープの留まりが悪くなったり、プラスチック部分にヒビが入ったりしていませんか?(毎日使っていると必ず劣化します)
歩きにくさ
歩いているとすぐに疲れたり、「家の中では使いにくくて邪魔だ」と感じて無意識に外している時間が増えていませんか?
時期的な目安
退院してから1年以上経過している場合、身体の変化により装具が合わなくなっている可能性があります。
※例)プラスチック短下肢装具の対応年数は1年半
2.自己判断で外す前に注意すべきこと
「痛いから」「邪魔だから」と自己判断で装具を外してしまうのは非常に危険です。装具を外した状態で無理に歩くと、足首が曲がってしまったり、膝がカクッと折れたりして、重大な転倒事故につながる恐れがあります。 また、一時的な安楽のために装具を外し、座ったり寝てばかりの生活になると、関節が硬くなり、さらに歩きにくくなるという悪循環に陥ってしまいます²)。装具は歩くためだけでなく、安全な立ち上がりや姿勢を保つためにも重要な役割を果たしています。
3.まず確認・相談すべき身近な専門職
装具に不具合を感じたら、決して一人で悩んだり放置したりせず、まずはご自宅に来てくれる訪問理学療法士や訪問看護師、担当のケアマネジャーに相談してください。全国に約19,000か所ある訪問看護ステーションは、地域における身近な相談窓口です。日頃から皆さんの状態変化を見守るスタッフが窓口となり、足の状態や生活環境を確認した上で、絶妙なタイミングで主治医にフィードバックを行い、専門家である義肢装具士との連携へとスムーズに繋いでくれます。
4.地域の「相談できる場所」の探し方
もし何らかの理由で、装具を作製した元の病院に相談できない場合は、各地域で整備が進む社会資源を積極的に活用しましょう。例えば、埼玉県理学療法士会ではWEB上で「埼玉県脳卒中下肢装具対応施設一覧」を公開しています。このような情報を活用すれば、身近な地域でどこに装具外来があるかがすぐにわかります。地域の窓口や専門職に相談することで、障害者総合支援法などの制度を適切に利用し、義肢装具士による修理や作り替えを行うことも可能となります。
まとめ
・義肢装具は歩行だけでなく生活の前提条件を整え、リハの打ち切りではなく、地域の通いの場への社会参加へとつなぐツールです。
・装具利用者へは、合わない・痛いと感じても自己判断で外さないように伝えて、地域連携の窓口となる訪問看護ステーションのスタッフやケアマネに相談し、装具外来などを活用して適切な修理や再製作を受けるよう、助言を行いましょう。
おわりに
装具利用者は、急性期・回復期の病院でリハビリを頑張ることに精一杯で、義肢装具についての適切な知識や対応方法を知らないことも多いです。本来は、退院後の生活において身体や生活の変化に合わせて、調整や再製作し続けることで真の完成を迎えます。少しでも気になった点があるときに迅速に対応できるよう、訪問理学療法士は訪問看護師やケアマネージャーと連携して、義肢装具のフォローアップに備えていきましょう。(図3)
【引用文献】
1)安藤雅峻. 入院医療から在宅医療・介護分野への変革とその担い手の持続的な確保に向けて. PTジャーナル 57, 427 (2023).
2)鈴木英樹 他. 下肢装具を用いた日常生活活動練習と理学療法. PTジャーナル 51, 311-317 (2017).
ハノン・ケアシステム(株) ホウカンTOKYO 副所長 理学療法士 岩下航大