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【第2回】在宅における装具トラブルへの臨床的視点 ―訪問看護ステーションの理学療法士・看護師の役割―

キーワード:義肢装具 地域・在宅 訪問看護ステーション 

<理学療法士向け>
※本記事は理学療法士の方を対象に執筆したものです。内容は全ての方に当てはまるものではありませんので、参考としてお読みください。

現在、我が国は少子高齢化による急速な人口減少と、団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年問題に直面しています。理学療法士の需要予測を見ても、入院医療分野に比べて在宅医療や介護分野での需要の伸び率がはるかに大きいことが示されています²)。これからの理学療法士には、病院という恵まれた専門機関にとどまるのではなく、地域という実際の生活の場へと役割とフィールドを変革していくことが社会的にも強く求められています2)。これまで義肢装具リハビリテーションは、主に医療期で完結するものと捉えられがちでした。しかし、在宅での医療と介護の複合的な需要はこの15年で大きく拡大しています。その強力な受け皿となっているのが、現在全国に約19,000か所まで急拡大している訪問看護ステーションの存在です。この社会基盤の充実を背景に、義肢装具に精通した理学療法士が地域分野へとフィールドを移し、その専門性を発揮して活躍する機会は間違いなく増加傾向にあります。

横断的医療・介護と専門職同士の連携について

この義肢装具士の人的資源不足と、在宅訪問におけるコスト面での強固な構造的限界を補完し、その間を埋める存在となるのが、全国に約19,000か所ある訪問看護ステーションによるリハなのです。 在宅での義肢装具リハビリテーションは、単なる介護保険のサービスにとどまらず、医療保険と介護保険の狭間に位置する横断的医療です。訪問看護ステーションでは、看護師と理学療法士による全身状態の医学的管理と創傷管理等が在宅での動作・活動の評価が連携して行われます。

このように、看護師と理学療法士が同じ組織内で日常的に情報交換を行い、専門分野を超えて計画的かつ組織的に協力し合うアプローチをトランスディシプリナリー・モデル(専門分野を超えた協働)と呼びます 1)。医療情報や設備が乏しい在宅環境において、訪問理学療法士には自らの手で対象者の状態を収集するフィジカルアセスメントの能力が強く求められます3)。併存疾患のリスクを日頃から連携している看護師と即座に共有することで、病状変化にいち早く気づき主治医とも連携することができます。特に近年は、重症度の高い心疾患や糖尿病、末梢動脈疾患により足に潰瘍ができやすい方、医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer:装具によるMDRPU)や、重複した合併症、全身状態が不安定なまま早期に自宅へ退院となるような複雑なケースも増えています。こうした在宅で急性期が続いているような状態において、訪問看護ステーションは親和性が高く絶大な強みを発揮します。これにより、全身状態を把握し小さなトラブルの芽を極めて早期に発見し、安全に義肢装具を生活の中に実装し続けることが可能になります。

訪問看護ステーションが行うことができる取り組みについて

訪問看護ステーションが行うことができる取り組みについて義肢装具士の訪問コストを最小限に抑える連携フローの構築

利用者の全身状態を看護師とともにしっかりと管理できているという安心感のもと、訪問理学療法士は義肢装具士のリソースを最大限に活かすハブ(結節点)として機能します。義肢装具士の在宅訪問に伴うコストを抑え、最低限の訪問で確実に義肢装具を適合させるためには、以下のような具体的な連携フローが極めて有効です。

訪問での理学療法士による事前評価と見立て

訪問理学療法士が自宅を訪問し、対象者の身体機能(痙縮や浮腫の変化など)や実際の生活環境(段差や生活動線など)を事前に評価します。その際、看護師との協働により創傷や全身状態リスクも同時に確認します 4)

情報共有と装具適応の検討

評価結果をもとに、義肢装具士と装具の修理や再作製が適応となるかを検討し、ケアマネジャーとご家族に情報を共有して同意を得ます。その後、主治医へフィードバックを行い、義肢装具作製に必要な意見書の作成を依頼します。

義肢装具士への的確なフィードバックと準備

訪問理学療法士が、事前に把握した生活動線や身体機能の評価情報、必要となる装具の仕様案を義肢装具士へ的確に伝達します。必要に応じてデモ機の評価なども行い、訪問前にできる限りの準備を整えます。

義肢装具士の訪問(最小限の頻度での採型・納品)

事前に理学療法士から詳細な見立てと環境情報が共有されているため、義肢装具士はゼロから評価や仕様検討を行う必要がなくなります。これにより、義肢装具士の在宅への訪問頻度を最小限に抑えることができ、移動時間や人件費といったコストの大幅な削減につながります。

在宅での協働による適合確認

義肢装具士が納品に訪問する際、理学療法士も協働・連携し、実際の生活環境下で装具の適合確認や動作練習を行います。

私が所属するホウカンTOKYOでも、義肢製作所の義肢装具士と密に連携し、この仕組みを実際に構築・運営しています。まだまだ課題もありますが、これにより、病院や義肢装具製作所へ出向くことが難しい要介護度の高い利用者様であっても、自宅で安全かつ確実に最適な義肢装具の提供を受けられるようになっています。

装具作製のプロフェッショナルである義肢装具士に対して、理学療法士は専門職として常に敬意を持ち、対等な関係づくりを心がけることです。同じ目的を持つ対等なパートナーとしてお互いの強みを活かし合うチーム連携を実践することが求められます 。

 

まとめ

・医療と介護の需要が急増する中、約19,000か所に拡大した訪問看護ステーションが地域の強力な受け皿となり、義肢装具に精通した理学療法士の活躍の場は在宅分野へと大きく広がっています。

・訪問看護ステーションにおいて看護師と理学療法士が共同で全身管理と事前評価を行い(トランスディシプリナリーな協働)、義肢装具士の訪問を最小限にとどめる連携フローの構築が不可欠です。

・専門職として理学療法士は義肢装具士に敬意を払い、対等なパートナーとして強みを活かし合う在宅チーム連携を構築することが重要です。

 

【引用文献】

1)光村実香. 在宅領域で必要な訪問理学療法の“力”—多種多様な対象者や他職種の背景を的確に捉えて. PTジャーナル 55, 180-184 (2021).

2)鈴木英樹 他. 下肢装具を用いた日常生活活動練習と理学療法. PTジャーナル 51, 311-317 (2017).

3)平野康之 他. 訪問リハビリテーション実践における要介護利用者の病状把握に重要なアセスメントの検討. 理学療法科学 30, 569-576 (2015).

4)安藤雅峻. 入院医療から在宅医療・介護分野への変革とその担い手の持続的な確保に向けて. PTジャーナル 57, 427 (2023).

 

ハノン・ケアシステム(株) ホウカンTOKYO 副所長 理学療法士 岩下航大