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参考キーワード:処方頻度 短下肢装具 脳卒中

知らないと恥ずかしい!?処方される頻度が高い短下肢装具7選

〈キーワード〉脳卒中、処方頻度、短下肢装具

※本記事は、理学療法士の方を対象に記載したものであり、全ての方に該当する内容ではありません。参考程度にお読みください。

脳卒中患者に装具を処方する際に、どの装具を適応させるか迷った経験はありませんか。近年、装具領域の革新が進み多種多様な装具が増えているため、選択肢が広がっている反面、理学療法士はその選択に困ることがあると思います。

本記事では、脳卒中に対する装具の中でも、発症後に処方される頻度の高い短下肢装具に着目して紹介いたします。装具療法の選択肢を広げ、治療に役立てていただけたら嬉しいです。

脳卒中に処方される短下肢装具の種類の数と処方件数

初回の装具処方に関わる機会が多い全国の回復期リハビリテーション病棟を有する109病院のアンケート調査では、過去1年間の処方件数の総数は34種類の3,543件で1病院あたりの平均処方件数は33件程度であったことが報告されています1)。短下肢装具(ankle foot orthosis:以下AFO)の種類は1病院あたり平均4.7種類であり、処方件数の割合は上位よりシューホーンAFO、両側金属支柱AFO、オルトップAFO、タマラック・ジレット継手AFO、ゲイトソリューションと続き、これらの上位5つの装具だけで全体の85.9%を占めている状況です。

アンケート調査結果では、初回処方のAFOが34種類もありますが、処方割合が0.1%以下と少ないものを除くと19種類となり、さらに上位7種類の処方割合が91.64%であるため、臨床的に処方頻度の高いこの7種類のAFOの知識が必要であることが考えられます。

脳卒脳卒中に対するAFOの種類

処方頻度の高いAFOの特徴を以下に示します。

シューホーンAFO2

最も一般的なプラスチックAFOであり、支柱と半月と足底部がプラスチックで一体化して作られています。材質には、硬度の点で優れているポリプロピレンがよく用いられています。足関節に可撓性を設け、プラスチックが撓むことで底背屈の動きが可能となっており、必要に応じてトリミング(アキレス腱付近のプラスチック幅を調節)、コルゲーション(プラスチック面に波板状の膨らみをつける)などの工夫が可能です3)。利点は、軽量で使用者に合った正確な形が得られやすく、装具の上から靴を履くことができることです。欠点は、破損した場合の修理が困難であり、耐久性に劣ることなどが挙げられます。

 

両側金属支柱AFO2

 

プラスチックAFOと比較して、強度が強く破損しにくいことが特徴です。内反尖足が強い方が対象となります。利点は、ストラップやパッドによる内・外反変形の矯正や、完成後の修正や破損時の修理は部分的交換が比較的容易なことです。欠点は、重いことや外観が悪いことなどが挙げられます3)

 

オルトップAFO2

 

既製品ですが、プラスチックの厚さや形状をやや大きくしたタイプもあります。シューホーンAFOよりも矯正力は劣りますが、小さく、薄く、軽く、柔らかいため違和感が少ないです。いろいろな靴が履けるため、使用者に好まれる傾向があります4)。主に軽症な方が対象となります。

タマラック・ジレット継手AFO2

 

ウレタン製の足継手であり、底背屈に動かすときに制動、戻るときに補助力が働き、軽度の尖足、下垂足に適応となります。継手による補助の力は弱いですが、継手中心に芯材を入れていることにより強度が上がっています。継手自身に制限機構はないので、プラスチックで動きを止めるような機構で動きを制限します5)

ゲイトソリューション2)

 

油圧式の足継手を用いており、底屈制動力が無段階に調整可能です。底屈制動範囲は初期角度から底屈方向に18°までです。下腿三頭筋や後脛骨筋の痙性が軽度から中等度の症例に対して適応となります。ヒールロッカー機能を改善するために油圧による底屈制動によって、踵接地から足底接地までの前脛骨筋の遠心性収縮の不足を補います5)。主に軽症な方が対象となります。

APS-AFO2

調整機能付き後方平板支柱型短下肢装具であり、底背屈50°の範囲で調整可能で任意の角度で固定、遊動設定も可能です。後方平板支柱がカーボン製でカーボンの撓みにより底背屈の制動が可能となっています6)

Engen TIRR AFO

踵と下腿後面が空いておりシューホーンAFOと比較して靴が履きやすい、通気性が良い、踵からの感覚入力が入りやすい、軽いなどの利点があります。ポリプロピレンの素材が用いられますが、コルゲーションがされており、軽くて、不快感が少ない装具です。主に軽症な方が対象となります。

まとめ

本記事では、脳卒中発症後に処方される頻度の高い短下肢装具について、その状況、種類や特徴を紹介しました。

AFOの処方件数の割合は上位よりシューホーンAFO、両側金属支柱AFO、オルトップAFO、タマラック・ジレット継手AFO、ゲイトソリューションと続き、これらを含む上位7種類の処方割合が91.64%であるため、臨床的に処方頻度の高いこの7種類のAFOの知識が必要であることが考えられます。

装具は、その種類や特徴を把握していることで、装具療法の選択肢が増えると思います。まずは、どのような装具があり、その特徴や対象疾患などを理解した上で、装具療法の選択肢を広げ、治療展開を拡大させることが重要であると思います。今回、ご紹介した装具が、少しでもお役に立てたら嬉しいです。

【引用文献】

1)平山史朗・他:脳卒中発症後,初回に処方される短下肢装具の2017年全国アンケート調査.日本義肢装具学会誌.36.57-61.2020.

2)日本支援工学理学療法会 下肢装具イラスト:

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwjT692-9emJAxUdlK8BHQWrCW0QFnoECCEQAQ&url=https%3A%2F%2Fwww.jptsat.jspt.or.jp%2Fuseful-information%2Fuseful-information-708%2F&usg=AOvVaw0C0Ln-1vlhSQb4F0Dj66hS&opi=89978449(2024年11月30日参照)

3)石川朗・他:15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 装具学.中山書店.東京.2020.

4)岩澤里美・他:オルトップAFOの知識.Monthly Book Medical Rehabilitation.225.30-35.2018

5)廣滋恵一・他:理学療法学テキスト 義肢装具学.メジカルビュー社.東京.2023

6)横田元実:調整機能付後方平板支柱型短下肢装具 (APS-AFO;RAPS)の知識.Monthly Book Medical Rehabilitation.225.36-40.2018

 

文責;福岡天神医療リハビリ専門学校 理学療法学科 山本 裕晃