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コラム

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装具は足を固定してしまうの?固定しない装具「ゲイトソリューションデザイン」とは?

ゲイトソリューションデザイン

キーワード:短下肢装具 固定 ゲイトソリューションデザイン

 

※本記事は全ての方に当てはまる内容ではないため、参考程度にご使用ください

 

脳卒中は、発症すると様々な症状を呈する病気といわれています。

なかでも手足が思うように動かしづらくなる運動麻痺という症状が一般的です。

特に、足に麻痺が生じるとうまく歩けなくなることや、転倒しやすくなることがあります。

 

そこで動かしづらくなった足をカバーし、歩きやすくなるように助けてくれるのが装具です。

 

今回は、装具の中でも短下肢装具について触れながら、ゲイトソリューションデザインという装具を紹介します。

本記事の内容 

短下肢装具
図1短下肢装具

 

図1は長さが膝下までの装具で短下肢装具と言います。

当然ですが、動かしづらくなった足をカバーするため、少なからず足首を固定します。

固定することで足が引きずりにくくなる、前に進みやすくなる等メリットがあります。

しかし、場合によっては足首が硬くなる、足首を持ち上げる筋肉が弱くなるというデメリットも存在します。

 

そのため、完全に足首を固定しないと歩けない人や固定は最小限にとどめる方が良い人等、その人によって適応の装具は異なるということです。

ゲイトソリューションデザインとは?

では最小限の固定に留められる装具ってどのようなデザインなのでしょうか?

図2をご覧ください。
ゲイトソリューションデザイン
図2 ゲイトソリューションデザイン

この装具はゲイトソリューションデザイン(GSD)と呼びます。

写真で見るととてもスタイリッシュに見えませんか?

そうなんです。こちらの装具は可能な限り固定をせずに歩きやすくするために開発された装具です。いくつか良い点を説明します。

 

良い点① 靴の選択肢が広がる装具

まず、装具の足底部分(赤丸部分)が小さいため、靴の大きさを左右で変更しなくても良いんです。(装具が大きいものだと装具側の靴を大きいサイズにしなければならないことがあります)また靴に入れやすいため、選べる靴の自由度も広がります。

このような部分から実用的な装具だと感じる方が多いのではないでしょうか。

良い点② 歩きやすい「油圧」機能が付いた装具。

そもそも名前の由来は「ゲイト(gait)=歩行、ソリューション(solution)=問題解決」です。

歩行の問題を解決する装具ってなんだか良さそうな装具ですよね?

では、足の麻痺を呈した患者さんが歩行をする場合どのような問題が生じているのでしょうか?

 

  • つま先が下を向き足が床に引っかかってしまう
  • 進行方向への加速が出来ず歩くのが遅くなってしまう

 

足の麻痺を呈した場合、上記2つは特に多くみられる問題といわれています。この問題に対して従来の装具は固定するという方法で解決していました。

図3をご覧ください。

 

ゲイトソリューションの働き方

図3ゲイトソリューションデザインの動き方

ゲイトソリューションデザインは背屈遊動(装具が前に傾き)、底屈制動(装具が後ろにゆっくり傾く)という機能があります。

前にも後ろにもしっかり動くんです。固定されている感じが無いですよね?

 

ただし、後ろにゆっくり傾くというのがこの装具の一番のポイントとなっています。

説明は省略しますが、ゆっくり傾く理由は油圧の力を使っているからです。

 

この油圧の力によって、足が床に引っかかりづらくなります。さらに、前に進みやすくなることで歩く速度が速くなります。

ここまで説明すると良い面が多い装具ですが、良い面だけではありません。

ゲイトソリューションデザインの欠点とは?

歩行の問題解決に良い面が多いゲイトソリューションですが、欠点もあります。

  • つま先を上げ下げする角度の調整がほとんどできない
  • 屋内では使えない
  • 他の装具と比較して値段が高い

 

順番に説明します。

この装具においては,足の状態に合わせて角度の大幅な変更ができません。足が垂れ下がって固くなりやすい方には調整が利かず不向きで、歩くときに装具が十分な機能を果たせない可能性があります。

 

次に、そもそもゲイトソリューションデザインは靴を履くことを前提に開発されました。装具によっては踵がくりぬかれており屋内でも履ける(滑りにくい)タイプもあります。しかしゲイトソリューションデザインは足底が覆われているため、屋内で使用するには専用の屋内履き(ゲイトフィックス=gait fix)が必要となってしまいます。

ゲイトフィックス

図4:ゲイトフィックス

最後に値段ですが、ゲイトソリューションデザインは11万-15万円です。

一般的なプラスチックの装具は4-6万円、金属タイプの装具は7-10万円です(時期や部品により変動しますので詳細は義肢装具士に確認してください)

所定の手続きを行えば医療保険や各種福祉制度の支給対象になるため、上記よりも安く手に入る場合が多いですが、目安として知っておいてください。

まとめ

本記事では

・装具は足を固定してしまうの?

・ゲイトソリューションデザインとは?

・ゲイトソリューションデザインの欠点とは?

について紹介しました。

 

ゲイトソリューションデザインは利点があれば欠点もあります。また、ゲイトソリューションデザインの良さを本記事では説明しましたが、固定用の装具が適している場合もあります。必ず担当の理学療法士や義肢装具士とよく相談して使用するようにしてください。

 

文責:上尾中央総合病院 理学療法士 小黒 修平