短下肢装具は装着することでどんな効果があるの? -システマティックレビューからわかる 歩行・バランス能力に及ぼす影響-
キーワード:短下肢装具、装着効果、システマティックレビュー
※本記事は、理学療法士の方を対象に記載したものです。
全ての方に当てはまる内容ではありませんので参考程度にお読みください。
*本記事は、理学療法士向けに作成された記事です。全ての方に当てはまる訳ではありませんので、参考程度にお読みください。
本記事の内容
短下肢装具(Ankle foot orthosis, AFO)は、臨床において軽度~中等度の運動麻痺のある脳卒中症例に使用され、歩行やバランス能力向上のため、多くの脳卒中症例に適応されています。2013年ごろから現在まで、このAFOの効果に関するシステマティックレビューが多く論文化されています。このコラムでは、システマティックレビュー(Systematic review, SR)およびメタアナリシス(Meta-analysis, MA)で明らかにされているAFOの効果についてご紹介します。
システマティックレビューとは?
SRは、あるテーマ(今回であれば脳卒中者にAFOを使用することによる歩行やバランスへの効果)について、これまでに発表された多くの研究を集めて整理し、「全体としてどのような結果が言えるのか」をまとめる方法です。SRでは一定の基準に基づいて論文を収集し、個々の研究の内容を評価してMAで定量的な統合を行うことが多いです(図1)。こうすることで複数の研究結果を統合することが可能ですが、一方で様々な研究が含まれるため研究デザイン(研究方法)やアウトカムの微妙な違いなどを統合することに困難を伴うこともあります。
図1:SR(図中の1, 2)とMA(図中の3)のプロセス ※SRの結果によってMAが実施されないこともあります。
システマティックレビューによる短下肢装具の効果
AFOの効果に関するSRおよびMAを報告した論文はいくつかあります。アウトカム(AFO装着による効果を受けるであろう項目)は主に①歩行速度やステップ長、Timed up and go test(TUG)、6分間歩行試験、歩行自立度(Functional ambulation category, FAC)に代表されるような歩行アウトカム、②階段昇降などのパフォーマンス指標、③Berg balance scale(BBS)や重心動揺計データによる姿勢非対称性などに代表されるバランスアウトカム、④関節角度や筋活動などの運動学的データが挙げられていました(表1)1-5)。歩行自立度や6分間歩行試験は非常に大きい効果4,5)が、歩行速度やTUG、BBSはいくつかの論文で中程度のAFO装着の効果1,3,5)が認められました。
これらSRで述べられている、装具の効果の出る仕組み(作用機序)は以下通りです。
1.遊脚期のクリアランス確保と代償動作の抑制3,4)
・最も代表的な機序は、遊脚期における下垂足を防ぎ、クリアランスを向上することで、ぶん回し歩行や鶏歩といった非効率な代償動作を減らすことができます。
- 立脚期や動的バランス時の麻痺側下肢の安定化4)
・AFOは歩行遊脚期だけでなく、立脚期における麻痺側下肢の安定性とバランス制御を向上させる役割も果たします。これはBBSが改善したことと関連している可能性があります。
・さらに初期接地がヒールストライクとなることで、歩行パターンの正常化を助けます。
- 歩行エネルギー効率の向上2)
・バイオメカニクス的な改善の積み重ねが、最終的に歩行に必要なエネルギー消費を削減するという機序につながります。
システマティックレビューの解釈上の注意事項
収集されたMAを実施した論文の多くは、装具を装着した際の即時効果、または短期間の使用によるものです。長期間の使用による治療的効果(装具を外した状態での変化)については、まだ十分な証拠が揃っていないと指摘されています1,5)。
また歩行速度やTUG以外は複数報告されたものが少なく、今後の研究の蓄積によって及ぼす効果の量が変わる可能性があります。最後にSRやMAによって装着効果のメカニズムが証明されたわけではないので、どのような機序でアウトカムに影響を及ぼすのかは、それに沿った研究疑問を調査した研究をみていく必要があります。
まとめ
・AFO装着により歩行速度やTUG、BBSなどで中等度の改善効果を示し、歩行自立度や6分間歩行ではより大きな効果が認められています。
・効果の主な作用機序は、遊脚期のクリアランス確保・立脚期の安定性向上・エネルギー効率改善などのバイオメカニクス的作用であると考えられています。
・ただしエビデンスの多くは即時~短期効果に限られ、長期的な治療効果やメカニズムの確証はさらなる研究の蓄積が必要です。
引用文献
1) Tyson, S.F. et al. Effects of an ankle-foot orthosis on balance and walking after stroke: a systematic review and pooled meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 94, 1377-1385 (2013).
2) Tyson, S.F. et al. A systematic review and meta-analysis of the effect of an ankle-foot orthosis on gait biomechanics after stroke. Clin Rehabil. 27, 879-91 (2013).
3) Wada, Y. et al. The effect of ankle-foot orthosis on ankle kinematics in individuals after stroke: A systematic review and meta-analysis. PM R. 14, 828-836 (2022).
4) Choo, Y.J. et al. Effectiveness of an ankle-foot orthosis on walking in patients with stroke: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 11, 15879 (2021).
5) Daryabor, A. et al. Effect of ankle-foot orthoses on functional outcome measurements in individuals with stroke: a systematic review and meta-analysis. Disabil Rehabil. 44.22, 6566-6581 (2022).
文責
済生会東神奈川リハビリテーション病院
セラピスト部 中村学

