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装具が壊れた!? そんな時どうする?~装具破損時の対応と判断ポイント~

〈キーワード〉 装具の破損・破損時の対応・患者家族指導

本記事は理学療法士の方を対象に執筆しています。すべての方に当てはまる内容ではないため、あくまで参考としてご覧ください。

装具は患者さんの歩行や日常生活を支える大切なパートナーですが、使用しているうちに部品の緩みや破損が生じることがあります。突然のトラブルは利用者の不安や安全性の低下につながるため、現場で落ち着いて対応できる知識が求められます。本コラムでは、装具に不具合が起きた際の応急処置について、装具に不慣れな方にも分かりやすく解説します。

 

破損の種類と想定される影響

装具は一度作れば永遠に使えるものではなく、靴や家電と同じように、使用するうちに劣化や損傷が生じたり、身体に合わなくなったりします。そのため「耐用年数」という目安が設けられており、この期間内は同じ種類の装具を新しく作る際に公的な補助が受けられない仕組みになっています。安全で快適に使い続けるためにも、定期的な点検や見直しが大切です。詳細はコラム「装具はこのまま使って良いの?知っておきたい装具の耐用年数」をご参照ください。

ここでは、破損の種類と想定される影響について、以下に詳しく解説します。今回紹介するのは、現場ではよくある4つのパターンです。

バンド・マジックテープの破損や劣化

バンドやマジックテープが破損すると、装具を十分に固定できなくなります。その結果、装具がずれやすくなり、歩行時の安定性が低下して転倒リスクが高まる可能性があります。

プラスチック部(カーボン部)のひび割れ・欠損

プラスチック部(カーボン部)にひび割れや欠損が生じると、装具本来の支持力が低下します。そのまま使用を続けると、荷重時に装具が変形し、怪我や症状再発の危険性が高まるため注意が必要です。

金属ジョイントの緩み・折損

金属ジョイントが緩んだり折損した場合、膝や足関節の動きを十分に制御できなくなります。その結果、歩行時の安定性が低下し、転倒の危険性が高まるだけでなく、関節への過度な負担につながる可能性があります。

 

すべり止めシート・ライナーの摩耗

下肢装具の足底に取り付けられているすべり止めシートの摩擦が低下すると、地面を踏んだ際に滑りやすくなります。その結果、転倒の危険性が高くなる可能性があります。また、ライナー(装具と足の間に入るクッション材)が摩耗すると、足底にかかる圧力が一部に集中しやすくなります。その結果、皮膚の擦れやまめ、さらには褥瘡などのトラブルや疼痛を生じる危険性が高まります。

 

 

適切な対応の流れ

ここでは、各装具に生じやすいトラブルに対して適切に対応するための流れを、以下に詳しく解説します。

使用を一時中止

優先すべきは常に安全です。破損した状態で無理に装具を使用し続けると、歩行の不安定化や転倒、関節への過度な負担につながる危険があります。特に、支柱・足関節部・固定ベルトなどの主要部品に破損が生じている場合は、ただちに使用を一時中止し、専門職へ相談することが望まれます。身体を守るための大切な対応です。

応急対応(必要時)

応急対応として、バンドが外れただけの軽度な破損であれば、テーピングや包帯などを用いて仮固定することで、一時的に装具の安定性を保てる場合があります。ただし、これはあくまで応急的な処置であり、長期間の使用は避け、できるだけ早く専門家による点検や修理を受けることが重要です。

装具作製業者・義肢装具士へ連絡

装具に破損が見られた場合は、できるだけ早く装具作製業者や義肢装具士へ連絡し、修理で対応できるのか、新規作製が必要なのかを判断してもらうことが大切です。事前に破損部位が分かる写真を送付しておくと、状況把握がしやすくなり、その後の対応もよりスムーズになります。

理学療法士・医師へ報告

装具が破損した場合は、理学療法士や医師へ必ず報告し、装具を使用しない状態で日常生活、歩行や訓練が可能かどうかを確認します。そのうえで、必要に応じて杖や代替の装具など、安全性を確保できる手段を検討することが重要です。

 

患者・家族への指導ポイント

壊れたまま使わないことを徹底する。

装具が破損しているにもかかわらず、そのまま使用を続けることは大変危険です。固定力や支持性が低下し、転倒や痛み、関節への負担増加につながる可能性があります。見た目では軽度に見える破損でも安心せず、「壊れたまま使わない」ことを徹底し、早めに専門職へ相談するようお伝えすることが大切です。

定期的にベルトや足底の摩耗をチェックする習慣をつける。

装具は毎日使ううちに、ベルトのゆるみや足底パッドの摩耗が少しずつ進行していきます。大きな破損へとつながる前に気づけるよう、装着前後に簡単に点検する習慣をつけることが大切です。異変を感じた場合は、早めに医療スタッフへ相談しましょう。

 

破損に気づいたらまず理学療法士や医師に相談 義肢装具士につなぐ流れを理解してもらう。

装具の破損に気づいた際には、まず医師や理学療法士へ相談することが重要です。そのうえで、必要に応じて義肢装具士へつなぎ、修理や再作製の判断を受けるという流れを患者さんとご家族に理解していただくことが、安全で確実な対応につながります。

 

保険制度(高額療養費・補装具費支給制度)を利用できる場合があるので案内する。

装具が破損した場合には、修理や新規作製に費用が必要となることがあります。しかし、状況によっては高額療養費制度や補装具費支給制度など、公的保険制度や福祉制度を利用できる場合があります。無理をせず、まずは理学療法士・医師などの医療機関や義肢装具士に相談し、利用可能な制度について案内を受けられるようお伝えすると安心です。

 

まとめ

装具が破損した場合、まず安全を最優先に考えることが重要です。支柱や足関節部などの重大な破損が見られる場合は、直ちに使用を中止し、身近な理学療法士に相談するとともに、義肢装具士へ修理を依頼します。

一方、バンドの外れなど軽微な破損であれば応急的な対応は可能ですが、そのまま使い続けず、早めに修理を手配することが望まれます。

いずれの場合も、必ず理学療法士や医師へ報告し、必要に応じて杖や代替装具など、安全を確保できる手段を検討することが重要です。

 

文責:日本保健医療大学 理学療法士 中野克己