下肢装具を長期間使用した場合と早期離脱した場合に生じる違い ~身体に及ぼす影響とその対応策~
〈キーワード〉 装具の長期使用・装具の非装着・身体への影響
本記事は理学療法士の方を対象に執筆しています。すべての方に当てはまる内容ではないため、あくまで参考としてご覧ください。
脳卒中片麻痺の方の中には、入院中に作製した下肢装具を退院後も引き続き使用される方が少なくありません。一方で、「装着が面倒である」「装具がなくても歩ける」「外観や重さが気になる」などの理由から、必要であるにもかかわらず早期に使用を中止してしまう方も一定数いらっしゃいます。
そこで本稿では、脳卒中片麻痺の方が下肢装具を長期間使用した場合と、必要にもかかわらず早期に外してしまった場合とで、それぞれ身体に及ぼす影響と、その対応策についてまとめました。
下肢装具を長期間使用した場合の身体への影響
メリット(良い影響)
歩行の安定性及び歩行能力の向上
長期間の装具使用で足首や膝が安定し、ふらつきが減少。体重移動がスムーズになり、歩行が安定して安心して歩けるため、転倒予防にもつながります。 さらに、必要な関節の動きを適切にサポートすることで、一歩一歩の踏み出しが行いやすくなり、歩幅や歩行速度の改善など、歩く力そのものの向上も期待できます。
二次障害の予防
装具で足首の位置を安定させることで、尖足や内反などの変形や拘縮の進行を防ぎやすくなります。
効率的な歩行
装具で関節を安定させ無駄な動きを減らすことで、代償動作が減り、体力の消耗を抑えて効率よく歩けます。
デメリット(注意点)
筋力低下
装具が足首や下腿を支えることで筋肉の働きが減り、使う機会が少なくなるため、徐々に筋力低下が進む可能性があります。
関節の硬さ
長期間同じ姿勢で固定されると関節を動かす機会が減り、可動域が狭くなって硬くなる可能性があります。
心理的依存
装具に頼る気持ちが強まり、「装具がないと歩けない」と不安を感じやすくなることがあります。
対応策
装具に過度に依存しないよう、医師・理学療法士の指導のもとで筋力強化やストレッチ、関節可動域練習を並行して行うことが大切です。また、歩行練習では必要に応じて装具を使い分け、定期的に装具の適合や装着時間を見直すことで、筋力低下や関節の硬さ、心理的依存を予防しやすくなります。無理なく続けられる形で取り組みましょう。
装具に関する相談先は、コラム「装具の相談って、誰に?どこにいけばいいの?」をご参照ください。
早期に自己判断で装具を外した場合の身体への悪影響
転倒や骨折の危険
足首が不安定になり、転倒しやすくなります。結果として骨折など大きなけがにつながる危険があります。
不良歩行パターンの固定
骨盤の挙上や反張膝などの代償動作が癖になり、誤った歩き方が固定されて後から修正しにくくなります。
拘縮や変形の進行
足の位置が保てず、尖足や内反などの変形が進行しやすくなり、拘縮も悪化する恐れがあります。
活動性の低下
転倒への不安から歩く機会が減少すると、活動量が大きく低下し、その結果として体力や筋力が急速に衰える危険があります。こうした活動性の低下は、転倒のリスクをさらに高める悪循環につながるため、早期の対策が重要です。
まとめ
長期間装具を使用すると、歩行時の安定性や安全性が高まり、転倒予防にも役立ちます。
その一方で、筋力や関節の柔軟性が低下しないよう、装具使用と並行してリハビリを行うことが重要です。
装具が必要な時期に自己判断で外してしまうと、転倒や骨折、不良歩行の固定、拘縮や変形の悪化などのリスクが高くなります。
現在の回復段階や身体機能に合わせて装具を調整しつつ、医師や理学療法士と相談しながら使用を続けることが重要です。
文責:日本保健医療大学 理学療法士 中野克己

