【事例で学ぶ】装具外来の運営方法とは?リハビリテーション天草病院の工夫と成功のポイント

〈キーワード〉 装具外来、病院、運営方法
装具外来はどのように運営しているのか?
~リハビリテーション天草病院の装具外来を紹介します~
※本記事は医療従事者を対象にしたものになります。参考程度にご覧下さい。
装具外来とは、生活期で装具にトラブルが生じた際に、再作製、修理、相談といった目的で受診して頂ける医療外来になります。
入院中に作製された装具の再作製や修理は理学療法士(PT)や義肢装具士(PO)等の専門職が関わらずして成し遂げられることはありません。身体の状態が変わるだけでなく、装具も消耗品のため、作製したときと同じ状態で何年も使い続けることの方が難しいと思います。
「装具がないと生活できないんです」
そのような方々を支えるために、装具外来は重要な役割を担っていると思います。
埼玉県脳卒中下肢装具対応施設一覧を作成する際の事前アンケートで、
「運営方法が分からない」 「マンパワー不足」 「脳卒中に対応していない」など、諸々の事情により装具外来を懸念・苦慮している医療施設があることが分かりました。
運営方法も病院によって異なることは間違いないと思います。
現在装具外来を実施している施設や、今後運営を検討している施設にとっても、天草病院の装具診の苦労話などを交えつつ、装具外来を実施するにあたっての一資料になればと思い綴ります。
リハビリテーション天草病院の運営概要
装具係と義肢装具士について
・PT:11名(うち外来担当2名)
・PO:2名(義肢装具製作所2社)
・修理助手:1名 が中心となって運営しています。
装具係の主な業務内容
※問い合わせは装具使用者やそのご家族、リハビリ担当者、入所施設職員やケアマネジャーなどの周囲の関係者だけでなく、場合によっては行政とやりとりをすることもあります。
装具外来当日の流れ
装具外来は木曜日に行っており、大きくは以下の2つのパターンに分かれます。
① 装具作製の処方や作製後の適合確認で医師の診察が必要な方
当院では、医師の診察は午前中のみとなっているため、診察が必要な方は午前中に行います。
② 診察が不要な方
ベルトや滑り止め交換、靴の相談などは医師の診察は行っておらず、午後の装具診の予約時間に直接お越し頂いております。
予約の管理方法
当院では入院患者の装具対応も同時に行っています。そのため、作業工程等を考慮し、完全予約制でスムーズに進行できるよう努めています。基本的には外来1件につき30分を目安に予約をとっています。
予約はExcelで管理し、以下の内容を記入しています。
・氏名
・予約時間
・用件(作製、修理、相談)
・連絡先
・内容(用件詳細、申し送り事項等)
問い合わせ対応の工夫
ここで重要視していることは、『臨床業務に差し支えない』ことです。
問い合わせは全て電話で受け付けています。診療時間内に電話がかかってくるため、臨床中などですぐに対応できないことがほとんどです。用件が複雑なケースも多いため、事務が受け取った電話をすぐに装具係に取り次ぐことはせず、臨床時間外で折り返しの電話対応をしています。
新規装具外来受診者の対応方法
一番大変です。当法人のリハビリを受けていれば、担当のセラピストがいるので、事前に評価が十分になされ装具作製に臨むことができます。一方で装具のために来られた新規の方の場合は、係がその場で動作分析をしたり、ADLの状況を聴取したり、場合によっては装具を使用した練習方法や介助法等を指導することがあります。前情報が無いので、一人に費やす時間が30分を超えることもあります。
そこで、「現在の状態を評価したうえで、修理にするか再作製にするか、今後の方針について相談したい」という患者様には、事前に診療情報提供書をご用意頂き、医師の診察を受けた上で装具診を受診して頂いています。診療報酬は以下のように請求しています。
【例】当院のリハビリを受けていない方が、装具外来を受診し、状態を評価した上で、その日に右下肢の短下肢装具を作ることになった場合。
初診料292点 + 採型料700点 = 992点
以前はほとんどボランティアで行っているような状況でした。外来リハビリを受けている方は代金を支払い、装具の相談で来られた方は修理になればPOに修理代金を支払うけど、評価したり、運動指導、介助指導をしたりしたことに対しては無請求…
なんだか色々なことが矛盾しているような状況を是正した結果、今に至ります。
運営で大変なこと
装具に関する相談は、相談者もよく分からない状況で問い合わせられる場合も少なくありません。そのため、用件の整理に時間がかかることが多いです。
また、当院のリハビリを受けていない方には、初見で係が対応するため、動作分析だけでなく、ADLの状況を聴取するなど、1件に費やす時間が30分以上かかることもあります。
経験上、““装具が当たって痛い、赤くなっている”、“靴”に関する相談は時間がかかることが多いです。
運営に重要なこと
利用する“制度”により作製・修理までの手順や、必要な手続き等が異なりますので、対応者が正しい知識をもっていることが重要です。医師、看護師、理学療法士、義肢装具士、医療事務等、多職種連携は欠かせません。装具外来がスムーズに進行するように、事前に予約者の情報を多職種で共有しています。
装具外来 | 特殊外来 | リハビリテーション天草病院 – 越谷市
問い合わせ窓口:048-977-3979(装具係)
文責:リハビリテーション天草病院 理学療法士 澤入彩佳